昨日、JAXA宇宙学校・えひめが開催されました。
県内では初開催です。
募集の段階から非常に注目をいただいており、定員を上回る応募でキャンセル待ちも出てしまうほど多数のご応募がありました。(今回定員オーバーで参加いただけなかった方、申し訳ありません。どうか今後のイベントにも引き続きご注目ください)
小中学生の子どもたちからの質問が授業の大半を占めるということで、どんなイベントになるか想像がつかなかった人も多かったかと思いますが、、すごかった!!!ですね。期待以上の大盛り上がりで、子どもたちの活躍ぶりが、本当に素晴らしかったです。
会場にいなかった人にも、少しでもあの雰囲気を伝える事ができれば、ということで、写真とともに振り返ってみます。
13:00、開校式がはじまりました。宇宙学校校長の阪本先生が、さっそく子どもたちの期待を盛り上げます。
満員の多目的ホール
「この宇宙学校は、普通の宇宙のお話を聞ける講演会とは違います。先生からのお話は15分くらいで、そのあとは皆さんからどんどん質問をしてください!」 この言葉を聞いて、質問する気満々の子どもたちの、期待の高まりと、何とも言えない緊張感が会場を包みはじめます^^
そして、1時限目のスタートです。
1時限目「太陽系外の惑星系を探る」 塩谷 圭吾先生
太陽系外の惑星系、ということで、宇宙人が住んでるかもしれない(!)、宇宙のはるかかなたにある惑星についての研究の紹介です。宇宙空間で観測を行い、はるか遠くの惑星探しにも貢献が期待されている「SPICAスピカ」という名の望遠鏡の計画など、最先端・現在進行形(あるいは未来)の話題も含めて、とっても分かりやすく色々と説明をしてくれました。会場の子どもたちの目線も、真剣そのもの。
そして、いよいよ質問タイムの始まりです。
初めに手を挙げてくれた男の子の質問、良かったですね~。
「うちゅうじんって、いるん?」
伊予の言葉^^で、しっかりと塩谷先生のお話を踏まえた、しかも大人でも聞きたくなるような本質的な質問をしてくれました。
それに対しての塩谷先生からの答えは、「きっといるんじゃないかと思う。」そして、「太陽系の中にも、もしかしたら地球以外に生き物がいる(いた)ところがあるかもしれない」とのこと。
ここで、阪本先生からも、さらに科学者目線でのフォローが入ります。
地球の私達と同じような人(ヒト)の姿をしているかというと、そういう可能性は低いだろう。なぜなら、宇宙のよその惑星は、おそらく地球とは環境がずいぶんことなり、生命がいるとしてもその場に適した形で私達人間とはだいぶ違った進化をするだろうから。 そういう意味で、人間のような姿をした宇宙「人」が居るかどうかは分からないけれど、でも宇宙「バイキン」ならきっといるんじゃないか、
と。
地球以外でも、生き物のいる星があるかもしれない、ということは多くの人が想像することかもしれませんが、「宇宙バイキン」というのは、科学者ならではのすごく現実味のある答えで、私も「なるほど!」と思いました。
その後も、まるで専門家が学会で質問しそうな鋭い質問も含めて、次々と子どもたちからの発言が続きます。そして、それら一つ一つに感心し、丁寧に答えてくれるJAXAの先生たち。見守っていた親御さんも含めて、会場が一体となって活発な質疑応答は続きます。そして、、当然ながら、とても授業時間だけで質問が尽きるはずもなく、あっという間に1時限目の授業が終了しました。
専門家の研究者もうならせた子どもたちからの質問、ここで全部網羅する事はできませんが、いくつかをご紹介しましょう。
- (話の中でも出てきた)トランジット法では、どれくらいの周期でまわる惑星が見つかるの?
- 答え: 相当な幅があるが、初めて見つかったものは、わずか3日で主星(恒星)を回るという、驚くべきスピードで回る惑星だった。
- SPICA計画は、いつ頃決まった? SPICAはどこまで行くの?
- 計画は2000年ころから。でもこれから予算が承認されないと、打ち上げられない(笑)
- 他の多くの人工衛星とは違って、月よりもずっと遠くまで離れたところまでいってから観測する。地球の熱が、ノイズになってしまったり、SPICAを温めてしまったりするのを避けるため。
- 惑星って、どうして丸い形をしているの?
- 星の重力が、高い所にあるものを引っ張っているため。
- でも例えば地球も、山や谷など、多少はデコボコがある。
- 重力が強い場合は、ほぼ丸い形になるが、イトカワなど小惑星のように小さな天体だと、丸くなろうとする力があまり強くならない。だからイトカワもあんな形をしている。
- 系外惑星が見つかったとき、形や大きさなどはどれくらい分かるの?
- トランジット法では、大きさについては情報が得られるが、質量などはなかなか分からない。逆に、ドップラー法の場合は、質量についてはある程度分かるが、大きさ(比重)などの情報を得るのは難しい。
休憩時間中も、いったん”スイッチが入った”子どもたちがJAXAの先生たちを逃すはずもなく、この通り…
質問がある子は会場の前に集まって、、
納得いくまで、質問攻め!
これらの写真、どちらも2時限目がはじまる前の、休憩中の様子なんです。
イベント終了まで待っていられず、先生たちをとことん質問攻めにしています。
さて、そんな忙しい休憩時間も終わって、いよいよ後半の2時限目に突入。
2時限目「小惑星探査機『はやぶさ』が目指したもの」 清水幸夫先生
多くのファンがいる「はやぶさ」に関するテーマという事で、当然のように熱い質問が続きます。
「はやぶさ」について、もっと教えて!
活発な質疑応答は、2時限目も続きます。
- はやぶさは、なぜイトカワに行くことにしたの? はやぶさ2はどこへ向かうの?
- 打ち上げのタイミングによって、行くことのできる小惑星はすごく限られてしまう。今回は、S型(石ころと同じ成分を多く含む)というタイプの、比較的小さな小惑星に行って、太陽系の成り立ちを調べる事が目的だった。それらの条件に一番合うものが、イトカワだった。
- はやぶさは、なぜあんな形をしているの?
- 研究者たちの、汗と涙の結果です^^
- できる限り軽く、機能も限定して作らなければいけなかった。そのため、太陽パネルやパラボラ型のアンテナは、固定した状態でそれぞれ太陽、地球へと向くよう、イトカワにつくタイミングもあわせて考えて作られたりしている。
- はやぶさ2は、どんな形
- ほとんどはやぶさと同じ。 元々、まったく同じものを使う予定だったが、いろいろはやぶさでのトラブルも踏まえて改善・変更された箇所もある。
- はやぶさでは、パラボラ型だったアンテナが、はやぶさ2では平らな形になっているのはどうして?
- 新しく開発された「スロットアレイアンテナ」という平面の丸いアンテナは、今までのパラボラ型よりも高性能。新しい技術を取り入れたので、はやぶさとは違う形になった。
- この平面型のアンテナは、金星に向かった探査機「あかつき」にも搭載されている。あかつきの場合、太陽に近づくために、太陽の光を集めてしまうパラボラ型のアンテナは不利。
- また、平面のスロットアレイアンテナは、重量の面でも従来のパラボラ型よりも優れている(=軽い)
- はやぶさでメインエンジンとして使われた「イオンエンジン」は、もともとは補助エンジンとしてよく使われていたそうだが、それはなぜ?
- イオンエンジンは、力は弱いけれど、とても効率のよいエンジン。
- 地球を回る人工衛星などでは、外国のものでは起動の修正(力は弱くて良い)のためのエンジンとしてよく使われてきた。
- はやぶさの場合は、長い時間かけてイトカワまで行くので、力は弱くても、長期間効率よく使う事ができるエンジンであることが大事だった。
- 化学エンジンは、どれくらいの威力があるの?
- 阪本先生:「清水さん、『●●ニュートン』とかいう答え方をしちゃダメですよ!」 清水先生:「そんな~」
- 2kgとか、5kgとかのコメ袋を持つときの力くらい
- イオンエンジンは、鼻息くらいの強さ。化学エンジンは、そのだいたい1000倍くらいだから、、鼻息1000人分!? でも、それだと良く解らないので、だいたい腕でグッと押すくらいのちから、かな。
ここで紹介している質問と答え、全体の半分にも満たない量なんですが、、なんとなく雰囲気は伝わるでしょうか。
子どもたちの興奮冷めやらぬまま、そしてまた大人たちは、子どもたちの熱意と知識・理解のレベルの高さに圧倒されたまま、2時間目の授業も終了。その後の閉校式を持って、宇宙学校は幕を閉じました。
終了後、講師の先生たちは再び質問攻め、そして今度はサイン攻めにもあいながら、それでも時間の許す限り、子どもたちの質問に熱心に答えて続けてくれました。
* *
参加者の皆さんの心には、どんなものが残ったでしょうか。
宇宙の最先端の謎に挑戦し続けているJAXAの研究者の先生たちが、こうしてまいてくれた種を、これから私たち自身が大切に育てていかなくてはいけませんね。
博物館が、こんな科学少年・少女たちと一緒に、引き続きいろんな科学体験を共有していける場となることを願ってやみません。ぜひこれからも、みんなで地元に根差した科学の文化を盛り上げていきましょう!!
(企画 井上)