産業研究科

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 来島海峡は、狭く潮の流れが速いため古くから海の難所として知られてきました。現在でも、多くの客船・貨物船・フェリー・漁船がひしめき合う海域でもあります。そのような海峡を安全に航行するために、世界でも来島海峡だけの航法がとられています。
 通常、船は右側通航で航行しています。ところが、来島海峡の航路内では、潮の流れの向きによって通航する航路が変わるのです。
 船は、水流を舵に当てて向きを変えます。そのため、向かい潮(潮の流れに逆らってすすむ)の時は舵に当たる水の流れが強く、舵の効きは良くなります。逆に、追い潮(潮の流れに沿ってすすむ)の時は、舵に当たる水の流れが弱くなり舵の効きが悪くなります。
 来島海峡では、航路の中央部に曲がりくねりがある西水道と狭く真っ直ぐな中水道があります。ということは、舵が効く向かい潮では西水道を、舵の効きが悪い追い潮では中水道を航行すると、安全に海峡を通過できるわけです。

●南流の時
(潮の流れが北から南に流れている 安芸灘→燧灘)

 南流の時は、関西方面へ向かう船は中水道を通り、九州方面へ向かう船は西水道を通ります。

南流時の航路
南流時の航路
●北流の時
(潮の流れが南から北に流れている 燧灘→安芸灘)

 北流の時は、関西方面へ向かう船は西水道を通り、九州方面へ向かう船は中水道を通ります。

南流時の航路
北流時の航路

 この航法を「順中逆西(じゅんちゅうぎゃくせい)」とよび、海峡を通る船は潮流信号によってどちらの水道を通るか決めます。
 潮流信号所には、電光板式のほか、灯光式(とうこうしき)や形象板式(けいしょうばんしき)のものがあります。

※注釈:「順中逆西(じゅんちゅうぎゃくせい)」
 潮流の流行と同じ方向(順潮時)に航行する時は中水道を航行し、潮流の流行に逆行(逆潮時)して航行する時は、西水道を航行すること

灯光式(とうこうしき)潮流信号所
 青や赤色の灯火で潮の向きを知らせます。南流の時は青色の光を北流の時は赤色の光を点滅させて船に知らせます。(大浜潮流信号所、津島潮流信号所、中渡島潮流信号所)

大浜潮流信号所
大浜潮流信号所
形象板式けいしょばんしき)潮流信号所
 形象板(けいしょうばん)と呼ばれる信号板で潮の流れを知らせます。南流の時は四角く黒色の板を上にあげ、北流の時は丸く赤い板を上にあげて、船に知らせます。(中渡島潮流信号所)

中渡島潮流信号所
中渡島潮流信号所

来島海峡海上交通センター ラジオ放送でも潮流情報が放送されています。
 また、来島海峡を見渡す山の上にある来島海峡海上交通センターでは、来島海峡を航行する船の管制をおこなっています。 右写真:来島海峡海上交通センター

 さまざまな施設や業務に携わる人々の手によって海上交通の安全は守られています。
 来島海峡大橋を渡る機会がありましたら、これらの施設を眺めてみてはいかがでしょうか?いつもとはひと味違った来島海峡を楽しむことができるとおもいます。
 また電光式潮流信号所は、関門海峡(山口県、福岡県)にも設置されています。
 船旅の際には、海の安全を守る施設の役割に思いをはせながら旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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参考文献:今治海上保安部 潮流信号所パンフレット
※答え:「南流で4ノット今後流速が速くなる」

(学芸員 安永 由浩)


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