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●鬼 瓦●

産業研究科 学芸員 吉村久美子
 「鬼瓦」って、聞いたことありますか? 瓦屋根の端の方にのっている飾り瓦のことです。
なぜ「鬼瓦」と呼ぶかというと、昔は厄よけのために鬼の顔の形をした瓦を主に飾っていたからです。
今は、いろいろな形の鬼瓦があり、鬼の形をしている鬼瓦を見つける方が難しくなってきました。
鬼瓦



クイズ 何の形の鬼瓦でしょう?

では、街で見かけた一般住宅の鬼瓦を写真で紹介します。 何の形の鬼瓦でしょうか?
そして、その形にはどんな願いが込められているのでしょうか? 当ててみてください。
(写真はクリックすると拡大します。 )

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 近頃は、建築技術の発達や建築様式の多様化により、瓦屋根の家を建てる人が減ってきています。そして、瓦屋根にするとしてもシンプルなものが好まれ、屋根の要所要所に鬼瓦を構える家は少なくなりました。次第に見る機会が減っていく鬼瓦ですが、珍しい形の鬼瓦探しをしながら街を歩くと意外に楽しく、遠くまで散歩してしまいます。みなさんも、めずらしい形やおもしろい形の鬼瓦を見かけたら、教えてくださいね。



 ところで、愛媛の瓦の産地といえば、菊間町ですが、なぜ「菊間」なのでしょうか?

その理由は、他のほとんどの伝統産業と同様、自然環境や地理的条件にあります。瓦づくりに適した気候、豊富にとれる原材料、船運に便利な海岸沿い。この3本柱が、菊間の瓦生産を発展させました。

古くから続く伝統産業には、その土地でなければならない理由があり、また、作られる製品は、必要不可欠なものとして人々の生活の中に溶け込んでいました。これが崩れ始めたのは、いつ頃でしょうか?

輸送技術が発達し、代替製品が安価に作られるようになり、産業全体の技術が確立されていく中、伝統産業はどこも最盛期の勢いを失っていきました。例えば菊間瓦でいえば、30年前70あった業者が今は40まで落ち込んでいます。

需要のない産業は成り立ちません。時代の流れとともに変化する社会全体の嗜好にあわせ、その産業が変化することは難しく、かといって社会全体の嗜好を変化させ、その産業(製品)に向けさせることは、もっと難しいのではと思います。

現在の大企業のほとんどが、この市場マーケティングと宣伝広告に巨額を投資しています。それは、社会全体の嗜好の重要性を認識しているからです。

私の中に、「菊間瓦の技術を大切に」と思う気持ちはあります。・・・が、もし実際自分で家を建てるとして、瓦屋根にするかというと、「・・・・・」。はっきり「瓦屋根にする」と言えないところがカッコ悪いのですが、これが今の人々の大半の答えでは?と感じます。

つまり、これが社会全体の今の嗜好。伝統的な日本風建築に惹かれる人よりも、今風の洗練されたデザインの家に魅力を感じる人が多く、また、より低価格なものを求める傾向が強いため、結果、瓦屋根が敬遠されているのではないでしょうか?

これは、菊間瓦だけでなく、他の伝統産業にもあてはまります。その時代に求められているかどうか、求められるものを提供できるかどうか、需要と供給のバランスがとれてはじめて成り立つ産業。数百年続いている伝統産業ですが、私たちの生きるこの21世紀で幕を閉じるものも少なくないかもしれません。

あなたは、伝統産業の将来をどう考えますか?


では最後に、とても珍しい鬼瓦を見つけたので紹介します。 (写真はクリックすると拡大します。)

弁慶と牛若丸?
弁慶と牛若丸?
二宮金次郎?
二宮金次郎?
養老の親子?
養老の親子?
浦島太郎?
浦島太郎?

 これらの鬼瓦は、越智郡大西町の貴布祢(きふね)神社にあります。人の形をした鬼瓦という点でも珍しいのですが、昔ばなし等に出てくる登場人物という点で全国的にも珍しく、一見の価値あり!! です。


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