|
そろそろツバメたちが、南へ帰る季節です。日本で卵を産み、雛を育てたツバメたちは、冬の間を暖かなフィリピンやマレーシアで過ごします。しかし、渡りをする鳥が、どこからどこへ移動しているのかは、長い間分かっていませんでした。 「どこからどこへ渡っているのか」これを明らかにする方法の一つに標識調査があります。標識調査は、鳥を捕獲し、番号の付いた金属製の足輪を付け放鳥します。そして、足輪の付いた鳥が再び捕獲されることで、移動ルートを明らかにしようというものです。 標識調査によって、種毎の越冬地、繁殖地、渡りのルートが明らかにされることで、より細かな保護対策をたてることも可能になってきます。捕獲の際には、種類の識別の他に、性別や年齢の判別も行なわれます。また、渡り鳥だけでなく、スズメなどのように一年中同じ所にいると思われている種でも、長距離の移動をすることが、標識調査によって明らかになってきました。 現在、こうした標識調査は、世界各国で行なわれています。日本では、山階鳥類研究所が環境庁の委託を受け、全国60カ所の鳥類観測ステーションを中心に調査を行なっています。調査は、鳥を安全に捕獲し、正しい識別を行なうために、資格を持った通称バンダー(標識調査協力調査員)が行います。現在420人ほどのバンダーが日本各地で調査を行っています。 愛媛県総合科学博物館でも、隣接する雑木林で1996年から標識調査を行っています。調査は主に、春と秋の渡りの時期と、越冬期に行い、これまで27種を放鳥することができました。 同時に観察も行っていますが、標識調査により、観察では見つけることのできなかった種類も確認することができました。まだ、放鳥数も少なく他所での回収記録は得られていませんが、これからも調査を続け、地域の鳥類相を明らかにするとともに、渡りルートの解明につながればと考えています。 |
(学芸員 山本貴仁) |
これまでに博物館の雑木林で標識された鳥 |