研究ノート
「加茂川河口の生きものたち」

3:植物調査
 1997年から1999年にかけて、加茂川の河口付近に広がる中州や干潟にどのような植物が生育しているか、調査を行いました。今回行った調査は「フロラ(植物相)調査」と呼ばれるもので、ある地域内に生育している植物の全種類をリストアップすることを目的とした基礎的な調査手法です。
 今回の調査では、37科128種の植物を確認することができました。
 加茂川河口域の植物相の最大の特徴は、「塩生植物」と呼ばれる塩分濃度の高い海水に耐えることの出来る植物が見られることです。
 特に多く観察されるのが、イソマツ科のハマサジ、キク科のフクド、アカザ科のハママツナ、ホソバハマアカザなどで、瀬戸内海沿岸の塩生地には典型的な種類です。またキク科のウラギクという種類は秋に紫色のきれいな花を咲かせますが、加茂川では数が減少して最近では確認することが出来ません。
 河川の河口や干潟は開発などにより急速に失われつつあるため、生育する植物も絶滅の危険性があります。今回の調査の結果でも、全国的に少なくなっているとされる植物が3種類確認されました。
 このような調査の結果は、その地域の自然環境がどのようなものであるかを判断するための基礎的な情報となるため、広い地域で詳しく調べられる必要があるのです。

(自然研究科 学芸員 小林真吾・山根勝枝・山本貴仁)

ズグロカモメ
ウラギクの花
現在加茂川ではほとんど見られない。


[1]鳥類調査  [2]底棲動物調査  [3]植物調査


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