話題提供

 多々羅大橋塔架設時風洞試験模型
学芸課産業研究科 主任学芸員 藤本 雅之

多々羅大橋塔架設時風洞試験模型  平成17年7月1日、本州四国連絡橋公団第三管理局より『多々羅大橋塔架設時風洞試験模型』を無償譲渡され、産業館交通運輸コーナーに展示したので紹介します。


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多々羅大橋多々羅大橋
 多々羅大橋は,愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ西瀬戸自動車道(しまなみ海道)にあり、愛媛県の大三島と広島県の生口島を結んでいます。多々羅大橋は斜張橋という形の橋としては中央支間長(主塔間の距離)が世界最長です。昭和48 年、多々羅大橋を含む本州四国連絡橋工事は、着工寸前まで建設計画が進んでいましたが、オイルショックのため一時凍結されました。この時、斜張橋ではなく吊橋で計画されていましたが、その後の橋梁技術の進歩により、周辺環境への影響が少ない斜張橋で建設できるようになりました。

多々羅大橋の場所
▲多々羅大橋の場所
〈多々羅大橋の概要〉
橋梁形式 3径間連続鋼箱桁斜張橋
現地工事開始日 平成4年11月30日
供用日 平成11年5月1日
(使用が開始された日)
橋長 1480m
中央支間長
(主塔間の距離)
890m
主塔高さ 226m(東京湾平均海面より)


風洞試験
 多々羅大橋を設計する際には、風の影響を調査するため、橋の模型に風を当て、その安全性を調べる風洞試験を行いました。風洞試験にはいくつかの種類があります。この模型を使って、塔を建設している途中(風にもっとも弱い)の風の影響を調査しました。

  この模型を使った試験により、比較的弱い風のときも強い風のときも、塔があまり揺れず、安全に橋の建設作業ができることが分かりました。
塔にかかる力
▲塔にかかる力
渦励振
▲渦励振
 流れの中に物体を置いたとき物体の下流側に渦ができる場合があります。塔がこの渦から力を受け、風の流れに対し直角方向に揺れが起こります。比較的弱い風による揺れは「渦励振」と呼びます。渦励振では、塔を破壊するほどの大きな揺れにはなりません。一方、強い風による揺れは「ギャロッピング」と呼びます。物体が流れに対して直角に動くとき、物体に力が働き、揺れが大きくなることがあります。ギャロッピングでは、非常に大きな揺れが発生する可能性があります。


《参考文献》
本州四国連絡橋公団『多々羅大橋の技術』(本州四国連絡橋公団)
土木学会鋼構造委員会鋼造進歩調査小委員会編『鋼科張橋 -技術とその変遷-』(1990 年、土木学会)
平田賢・岡本史紀編『熱流体のサイエンス』(1996 年、日刊工業新聞社)

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