ここにも科学

 星空マニア
鈴木 麻乃

極寒の流星観測

 冬。星を見るには辛い季節である。寒さに異常に弱い私にとって、その辛さは並大抵のものではない。しかし、数年前にぬくぬくウェアに出会ってから、私の防寒対策は完璧になった。最近の化繊技術は魔法の様だ。なんと汗で発熱して暖かくしてくれるらしい。今では足先から指の先まで、頭部を除く全てをぬくぬくウェアで覆い尽くし、冬の星空観察も何のそのだ。

 ところが、それでもまだ寒さに泣くのが、極寒の流星観測である。毎年12月14日前後、年間三大流星群の一つ、ふたご座流星群(以下、ふたご群)が極大日を迎える。そんな寒い季節にわざわざ流れ星なんか見んでも…と言われそうだが、このふたご群がここ最近まあ良く流れるのだ。冬の澄んだ星空を背景に、確実にまとまった数の流れ星が見られるとあれば、寒さを我慢してでも見るしかあるまい。とはいえ、流れ星が多く見られるのはだいたい明け方で、その寒さときたら想像を絶する温度なのだ。そこで、今度はとうとうダウンの寝袋を購入した。マイナス数度までOKの極寒仕様。これが素晴らしい保温力で、12月の明け方4時前後、最も寒い時刻に1〜2時間野外で寝転がっていても、感動的な暖かさで身を守ってくれる。残念ながら流れ星を数えるため、目だけは極寒の空気にさらさなければならない。まつげには霜が。でも体はあったか。しんと静まり返った夜空には、沈みゆくオリオンと冬の星座たちがきらめいている。そこに流れる流れ星。何度見ても初めて見た人のように「あっ、流れた!」と月並みな声を上げてしまう。ああ、寝袋様々、また来年も寒さに負けずふたご群を見よう。そう思わせる光景なのだ。ここに書いた流星観測とは、流星群に含まれる流星とそうではない散在流星を見分けながら時間を区切って数を数える眼視観測のこと。流星観測の最も簡単な方法だ。今年のふたご群の極大日も14日の夜。寒さに強いと自信のある人は、ぜひふたご群観測に挑戦してみてほしい。 


すずき・まの/元学芸員


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