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 トガリアメンボを探してください
大西 剛 

 アメンボは、小さな水たまりから池、湖、川、そして海までさまざまな水面にすんでおり、人間の最も身近にいる昆虫のひとつです。カメムシと同じ仲間で、長い脚を持ち水上生活をするのが特徴です。成虫になるとはねを持ち、飛んで移動することもできます。また、カメムシと同じように臭いを発する腺を持っており、捕まえると飴のような匂いがすることから「飴ん棒」という名前がついています。アメンボの仲間は日本に約20種が生息していますが、最大種は東北以南に生息するオオアメンボ(写真1)で、2cmを超える体に6cmに達する脚を持っており、世界的にも大型の部類に入ります。

(写真1) オオアメンボ
(写真1) オオアメンボ

 体の側面や6本の長い脚全体に細かい毛が生えており、水の表面張力を利用して水面に浮かび、滑るように動き回ります。ちなみに石鹸などの界面活性剤が流れ込んで水の表面張力が弱まると、アメンボは浮くことができず溺れてしまいます。肉食性で、主に水面に落ちた他の昆虫に口を突き刺し、消化液を注入して消化された体液を吸います。獲物を探す際は、獲物が水面に落ちてもがくときに発生するさざ波を感知して、獲物の位置をつかみます。そのため、アメンボがいる水面を指でたたくなどして波紋を作ってやると、アメンボが寄ってくることがあります。

 このように私たちに馴染みの深いアメンボですが、最近「トガリアメンボ」という聞きなれない仲間が見られるようになりました。東南アジアに広く分布する体長約5mmの小さなアメンボで、腹部の端がとがっているのでこの名前がついています。日本には分布しないとされていたトガリアメンボですが、2001年8月から秋にかけて、兵庫県淡路島北部や神戸市周辺で突然採集されるようになりました。今のところ、東南アジアから持ち込まれた水生植物などに付着して移入されたと推測されていますが、正確な侵入経路は明らかになっていません。四国でも2003年9月徳島県鳴門市ではじめて採集され、愛媛県では2005年6月24日に当博物館のある新居浜市大生院で採集されました。

 外国から新たに入ってきた昆虫が、今後どのように分布を広げ、日本在来の生物にどのような影響を与えるか、注意深く見守っていく必要があります。非常に小さいアメンボなので、なかなか見分けがつかないかもしれませんが、区別のポイントを書いておきますので、見つけた方は博物館まで連絡をお願いします。

トガリアメンボを見分けるポイント
  1. 池など流れのない水面でのみ見られる。
  2. 木陰やコンクリート護岸の隅の方など、風のあたらない静水面に集まっている。
  3. はねのある有翅型(写真2)と、はねのない無翅型(写真3)がいる。無翅型は背中に白い縞模様がある。
  4. 他のアメンボより動きがすばやい。

(写真2) トガリアメンボ有翅型メス (写真3) トガリアメンボ無翅型メス
(写真2) トガリアメンボ有翅型メス (写真3) トガリアメンボ無翅型メス

おおにし・つよし /主任学芸員・昆虫担当


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