皆既月食 |
伊藤 文雄 |
2007年8月28日の宵、およそ6年半ぶりに皆既月食が見られました。 日食や月食は望遠鏡がなくても観察しやすいこともあり、小学生の頃から家族に誘われてよく見たものでした。今回の皆既月食は、日没頃、東の地平線に月が昇り始めたときには、もうすでに欠け始めており、21時24分には、元の満月の状態に戻りました。したがって、ちびっ子天文家にも観察が可能な時間帯の現象でしたので、夏休みの自由研究の題材にした人も多かったのではないでしょうか。 皆既月食とは、太陽・地球・月が一直線に並んだときに起こる現象です。皆既中は、地球の影に月が完全に入ってしまうので、理屈の上では月は見えないはずです(図)。ところが、実際には地球の大気中を通過してきたわずかな光が月面を照らすために月が見えてしまいます。しかも、地球の大気の具合によって、月の色がわずかに赤色や橙色や黄色や黒色に変化します。そのときの微妙な色の変化が楽しみなのです。 |
月食の始まりは17時51分、月出(新居浜市)は18時35分、皆既食の始まりは18時52分、食の最大は19時37分、皆既食の終わりは20時23分、月食の終わりは21時24分でした。 今回は月食中に、みずがめ座σ星(4.8等) の恒星食が起こりました。普段、月はたくさんの恒星を隠していますが、月が明るいため恒星が隠される現象はあまり見ることができません。見られるのは月が細くて暗いか、とても明るい恒星が隠される場合だけです。ところが、皆既月食中の月はかなり暗くなるので、普段、見えないはずの恒星食が見えるようになるのです。今回のように明るい恒星が皆既中に隠される現象は、およそ6年半ぶりでした。みずがめ座σ星が月の左下に潜入したのが19時40分ごろ(新居浜市)、右下から出現したのが、皆既終了時刻の20時23分ごろ(新居浜市)でした。 次回の皆既月食は2010年12月21日に見られますが、このときも今回と同じように月が北東の空に昇ってきたときにはすでに皆既の状態になっています。条件のよい皆既月食が見られるのは2011年12月10日になってしまいます。 |
いとう・ふみお/教育専門員・天文担当 |