科学クラブトピックス
 太陽の光で てんぷらを揚げよう
科学クラブ 黒瀬康正

1.背景

 約10年前に、焼き鳥クッカー (写真1) というソーラークッカーを製作していました。そのクッカーの鏡には、透明アクリル板にアルミ蒸着させた反射率の優れた鏡を使っていて、面積が小さいながらも高効率なソーラークッカーでした。今回新しいソーラークッカーを製作するに当たり、その鏡を使用し適度な受光面積があれば十分な火力が得られるソーラークッカーが製作できると考え、てんぷらも調理できるクッカーを目標に取り組みました。

2.目標

[1] 炊飯・てんぷらがストレスなく調理できる火力
[2] 持ち運びがしやすい。□1m程度の正方形
[3] 風に飛ばされない。適度に重いこと

(C)にこネットつくば
写真1 焼き鳥クッカー
現在は神奈川県八景島にある「海の公園」で展示されています。また第5回新エネルギー世界展示会に出品・展示されました。

PART1 製作編

3.主な仕様

[1] 型式: 反射型ソーラークッカー
[2] 鏡の配置: y²=4・600・χ の回転放物面が外接する多面体
[3] 鏡: □150mm×36枚
[4] 面積: 0.82m²
[5] 焦点距離: 600mm
[6] 材質: 鏡 3mmアクリル+アルミ蒸着ミラー(裏面反射)、
底板 □910×9mm×1枚 ベニア板、
支柱 □24mm×900mm×4本 パイン材 (写真2)
[7] 重量: 10Kg程度
[8] 出力: 300w(晴天時の期待値)

写真2 底板・支柱の材料

4.作り方

[1] 底板に寸法どおりにケガキます。 (写真3)
[2] 底板を軽量化のためにホールソウで肉抜をきします。根気の要る作業です。 (写真4)
[3] 支柱を計画した座標を元に切り出します。性能にかかわる重要な作業です。正確さが要求されます。 (写真5)
写真3
支柱位置や肉抜き穴のケガキ
写真4
底板の肉抜きができました
写真5
各支柱の製作

[4] 支柱を底板に接着します。 (写真6,7)
写真6
底板に支柱を付けていく
写真7
支柱がすべて付きました

[5] アクリルミラーを□150mmに切り出し、仮置きして位置を確認します。 (写真8,9)
写真8
鏡を載せていきます
写真9
すべての鏡を仮置き

[6] 間違いなければ大きめのワッシャーとビスで固定します。 (写真10)
[7] 外周の支柱に補強をします。 (写真11)
写真10
鏡をビスで固定します
写真11
鏡の裏側のようす

[6] アクリルミラーの保護シートを剥がして完成です。 (写真12,13)
写真12
完成後、鏡の保護シートを剥ぎました
写真13
真上から見たらこんな感じ

PART2 クッキング編

5.ソーラークッキング

 2010年5月3日に愛媛県総合科学博物館で開催されたイベント「わくわくミュージアム」でソーラークッキングを行いました。 (写真14)
 当日は晴天に恵まれ、最高のソーラークッキング日和となり、朝10時よりクッキングを開始し、終了の3時までクッキングを行うことができました。博物館エントランスホール入り口横でクッキングを行い、大勢の来館者の方に見ていただくことができました。
写真14 ソーラークッカーと来館者
使用したクッカーは、
[1] 反射型多面体クッカー(今回新作:PART1参照)
[2] 西田式大型反射型クッカー
[3] エデュクッカー003(市販品)
[4] 自作熱箱型クッカー
メニューは、
・ゆで卵 ・焼き芋 ・ささみ蒸
・たい焼き ・ホットケーキ ・焼肉
・炊飯 ・てんぷら

[1]反射型多面体クッカーでは、
 機器の構成は、鏡本体と+フライパン等の支持装置から成ります。支持装置は、カメラ用三脚に木製の棒を付け一方にフライパン又は鍋を、もう一方にはバランス用の錘として水を入れたPETボトルを付けています。 (写真,15)
 まず、肉を焼いてみました。ソーラークッカーで加熱したフライパンに肉をのせると、ジューと音がして、肉がすぐに焼けてしまいました。 (写真,16,17)
 さらに目標であった炊飯とてんぷらに挑戦してみました。炊飯は、小型の黒く塗ったアルミ鍋で、1合のお米を炊いたところ、17分で炊き上がりました。 (写真18)
 
写真15 クッカーの構成   写真16 焼肉を焼く久松君
 
写真17 肉が焼けました   写真18 ご飯も炊けました
 てんぷらも、同じ鍋で肉詰めレンコンを揚げてみました。食品を入れた状態でもなたね油の温度を約190℃に保つことができ、こんがりと揚げることができました。油だけだと、240℃まで温度が上がりました。 (写真19)
 
写真19 てんぷらを揚げました   写真20 たい焼きが焼けました
[2]西田式大型反射型クッカーでは、
 たい焼きやホットケーキを焼きました。面積が大きいので強い火力が得られ、たい焼きも難なく焼けました。 (写真20)
 

[3]エデュクッカー003では、
 ささみ蒸し、焼き芋を作りました。アルミホイルの片面が黒く着色された東洋アルミエコプロダクツ(株)から発売されている「石焼芋黒ホイル」でささみを包み、クッカーに入れて加熱しました。これを使えば容器を使わずに短時間においしく調理できることがわかりました。非常に有効なものだと思います。 (写真21)


[4]自作熱箱型クッカーでも、
 こちらも同様に黒ホイルで、サツマイモを包んで焼きました。いつもより早くおいしく焼き芋ができました。
写真21 エデュクッカー003

 今回のクッキングは最高の天気となり、まったくストレス無くクッキングができ、楽しい一日を過ごせました。皆さんもソーラークッカーを作って、晴れた日にはソーラークッキングをやってみませんか。

6.クッキングに参加した方々 (ありがとうございました。)

科学クラブ: 坂井さん、森さん、藤川さん一家、久松さん一家、弓山さん一家
博物館: 進主任学芸員、藤本主任学芸員
 

7.参考にした情報

[1] 木下さんのHP 「ソーラークッカー用36面角型マルチミラーの製作」
(注:今回の多面体クッカーの座標の考え方は、木下さんのものと若干ちがいます)
[2] 東洋アルミエコープロダクツ(株)のHP
[3] ソーラークッカーで太陽熱調理



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