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「神社に伝わる隕石伝説〜愛媛県の「星」に関する地名〜」

 隕石の正体は、宇宙空間に漂っている岩や塵のかけらが地球に落ちてきたものです。今では当たり前のことですが、隕石や流星の正体が科学的に理解されてきたのはまだほんの200年ほどのことなのです。ドイツの物理学者クラドニが隕石は宇宙からやってくるものであるという主張を初めて行ったのは、18世紀末のことでした。それまで天文学者は「天から石が降るはずがない」と考え、落ちてきた隕石を見ても「火山の噴火で飛ばされてきた石だ」とか「大気中の成分が固まったものだ」という苦しい説明しかできなかったのです。 話題提供
ギベオン隕石(当館常設展示)
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眞星神社
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星原市の
市指定史跡碑
 人々の生活の中での隕石は天から降ってきたものとして崇められることが多く、落ちた場所に祠を建てて祀られている場所が日本各地にいくつもあります。そのような場所には地名に「星」や「天」という文字が付いていることがありますが、ここ愛媛県にも「星」にちなんだ美しい名前の地名や神社がいくつもあります。
 博物館がある新居浜市に星原町という所があり、ここに「眞星(ほし)神社」と呼ばれる小さな神社があります。「星の宮神社」とも言われるこの神社の境内には、その名前の由来が記された記念碑が立てられます。これによると「昔この地に隕石が落下し、里人は一小祠を建立して星の宮、真星神社、星原神社等と呼称して信仰し…」とあり、ここで落ちてきたと記されている隕石がこの神社のご神体として祀られています。また眞星神社は「古代市場の発生地」であり、すでに平安時代から神社の境内が市場として賑わっていたそうです。
 小松町にも、「星」の付く地名があります。黒瀬ダムを超えた山の中のお寺・横峰寺をさらに登ったところに「星森峠(ほしのもりとうげ)」があります。地名の由来は、この場所で弘法大師が星供養を行ったところから来ています。昔から中国や日本では、人は生まれた年の干支によって北斗七星の7つの星のどれかに所属し、人の寿命や運命はその星がつかさどると信じられてきました。自分の所属する星を祭って供養すれば運命が開けるとし、それを星供養と言いました。 話題提供
弘法大師像
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星森の
由来の碑
 弘法大師の星供養について「横峰寺縁起」には、中国・四国・九州が大干ばつのとき、嵯峨天皇の勅命で弘法大師が星森で星供養を修したところ、多くの善星が降り、また空から独鈷杵(どっこしょ:真言密教の法具)が降ってきて、やがて恵みの雨が降ったという伝説が記されています。「多くの善星が降り」とは流星群のこと、「独鈷杵が降ってきた」とは隕石が落ちたことをあらわすのではないかと言う説もあります。
 他にも「星」が付く地名や星にちなんだ伝説が残る場所がたくさんありますが、残念ながら愛媛県には科学的な分析によって認められている隕石はありません。しかし、隕石は空から降って来たところを発見されなければ落ちている石と見分けがつきません。もしかしたらあなたのまわりにも隕石がこっそり落ちているかもしれませね。

(学芸員 鈴木麻乃)


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