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「タオルの柄をつくる」

 お持ちのタオルを手にとってよくご覧になってみてください。タオルには、普通の布と違い、経糸が輪になっているパイルと呼ばれる部分があります。タオルの中でこのパイルを作る場所を決めているのが、紋紙と呼ばれる紙です。
 紋紙にはたくさんの穴が開いていますが、この穴の一つがパイル一つにつながっていて、パイルを作るかどうかを決めています。穴の開いていないところがパイルを作らないところで、穴が開いているところはパイルを作ることになります。紋紙1枚でよこ1列分のパイルの情報が入っています。例えば、よこ100列のパイルがあるタオルの情報が入っています。例えば、よこ100列のパイルがあるタオルには100枚の紋紙を使います。色のついた経糸を使うと、タオルにきれいな柄を作ることもできます。
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紋紙
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柄(パイル糸)の出し方
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ピアノマシン
 写真のピアノマシンは昭和14年から使われていた紋紙を作る機械です。
 1度の操作で12個づづ紋紙に穴をあけることができました。今治で初めて、民間の仕事として紋紙を作った羽藤武さんという方が使っていた機械です。
 羽藤さんは世界で初めてプリントタオルを作りました。プリントタオルは染めてある糸を使うのではなく、白いタオルに後から絵をつけるタオルです。最初のプリントタオルは『ヘリザリンカラー』という染料で染めたそうです。『ヘリザリンカラー』は糸の中まで染み込む染料ではなく、分かりやすく言えばプラスチックの粉末を糸の表面に吹き付けるというイメージだったそうです。この『ヘリザリンカラー』を使って染められたテーブルセンターを見て羽藤さんは「これならタオルに思い通りに模様が置ける」と直感して、プリントタオルを作る研究に取り掛かりました。網戸に使うビニール製の網と漆を使いプリントの型を作り、プリントタオルを作ることができました。しかし、デパートへ出荷すると、売り場に展示中に模様の周りから油のようなにじみが出る、また染めた糸が固くて幼児がけがをする、それから染めの色が落ちやすいといった問題が起きました。このような問題が起こるたび何とかしようと研究をし、それでもうまくいかなければ『ヘリザリンカラー』の製造元から大阪に派遣されているドイツ人に問い合わせを行い、解決しました。
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タオル織機
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初期のプリントタオル工場
 今、何気なく手にしているタオルもこのような数多くの試行錯誤の上に成り立っているのです。「どうすれば売れるタオルを作れるのだろう?」と考え試行錯誤を繰り返す。そして成功があれば地域の産業が発展していく。ピアノマシンなどはその過程を語る物と言えます。過去に使った機械やそこから生まれた物は、先人がどのような努力をしてきたかを示す証拠の品であるということができるでしょう。

(学芸員 藤本 雅之)


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