特集
平成13年度企画展 「人体」

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人体標本の展示について

 日本の博物館が人体標本(プラスティネーション標本)を初めて展示したのは、1995年、東京大学総合研究博物館、国立科学博物館等でした。特に、国立科学博物館の「人体の世界」は、人体標本を一般の人に如何に見せるかということを真剣に考えた初めての機会でした。結果は、子どもから高齢者まで45万人を超える大変な人が見学し、関係者に大きな驚きを与えました。このときの展示実行委員長が、今回の記念講演にお呼びする順天堂大学医学部の坂井建雄教授です。
 人体標本の展示について、坂井教授はその著書(注2)の中で次のように述べています。
「人体解剖標本を見ることによって、人は身体についてのイメージを初めて明確につかむことができる。いったん心臓を手にとって眺めてみれば、それが血液を送りだすポンプであることを、単なる知識としてではなく、まさに体験によって確信することができる。人体についての明確なイメージをもつことは、医師が患者に充分な情報を提供して、患者自身に医療方針の最終決定を委ねるインフォームド・コンセントの、大前提ではないだろうか。」
 今回の企画においても、愛媛大学医学部をはじめ多くの医学関係者の御協力・御指導により、人体標本の展示が可能となりました。
 人体標本の展示は、まず、人体(ご遺体)への尊厳が失われないようにするという観点から、どこへでも展示できるものではなく、何のために、どのように見せるのかといったTPOを考える必要があります。
 このため、私たちは、倫理面に配慮した展示に努めるほか、地元の日本病理学会や日本解剖学会に所属する先生方にも常駐していただくなど、観覧者にとって、教育効果が十分得られるよう配慮いたしております。

注2)坂井建雄「ガラス瓶から解き放たれた人体一新解剖学の夜明け一」(1997)




全身スライス標本
〈全身スライス標本水平断〉
厚さ5mmにスライスされた86枚のプラスティネーション標本
(写真提供:読売新聞社)
肝硬変
〈プラスティネーション標本 肝硬変〉
結節ができ、触るとごつごつしています。
肺と心臓
〈プラスティネーション標本 肺と心臓〉
たばこを吸う人の肺は、吸わない人に比べて黒くなっています。 近年では、たばこを吸わない人の肺も自動車の排気ガスなどのためほとんどが黒くなっています。


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