学芸員の仕事場

第4回 新番組の開発

※写真、図はクリックすると拡大されます

「みなさん、こんにちは。ただいまからサイエンスショーを始めます。」から始まって、わずか15分のショータイム。科学技術研究科がしている毎日の仕事です。でも、サイエンスショーの仕事は、その番組を開始する何ヶ月も前から始まります。今回の「学芸員の仕事場」では、皆さんにショーとしてお見せする前に私たちがしていることを、秋番組「落下と重力サイエンス」をもとにして紹介しましょう。

企画のじかん
企画のじかん さて、次回は何の実験をしようかな。そのシーズンの実験を担当する学芸員は考えます。頭の中であれこれと好き勝手に考えるので、かなり楽しいひとときです。これだっというテーマが決まれば、次は実験です。ショーで出来てもできなくても、とにかくどんどん実験を考えます。だんだんショーの構成が練られてきて、いる実験いらない実験、出来るように努力しなくてはならない実験と、内容とやるべきことが固まってくるのです。
 実験のアイデアなどはどんどんメモ用紙に書きこみます。そのほとんどは使われないけれど、メモによると、始めのアイデアではリカちゃん人形を使う予定だったようですね。さらに、実験が出来るかどうか実際に計算したりテストしたりします。

なければつくろう
 テスト結果や、参考文献を調べていくうちに、どんな実験器具が必要かが明らかになってきます。多くの皆さんから見られるように、大きな器具も必要になります。しかし、大きな器具はあまり手に入りません。そんなときはどうするか?もちろん、自分でつくります。
新番組の開発  設計図はしっかり描きます。壊れたり、事故があったりしたら大変です。設計図が完成すると、材料の調達を始めます。
新番組の開発  博物館にはいたるところに、材料が隠されています。前に使った材料の余りや使い終わったものを分解しているのです。
新番組の開発  足りないものは買いに行きます。
新番組の開発  工作室での作業。電動工具のおかげで、材料の加工も比較的簡単にできてしまいます。
新番組の開発  よくみると写真の端に壊れた乳母車が転がっていますね。別の学芸員が何かの工作に使うので置いているようです。
新番組の開発  設計図に沿ってどんどん加工していきます。加工している間は、工作なので楽しいのですが、その後につらい日々が待っています。後でまたお話しましょう。
新番組の開発  読者の中で、私のペンキ塗りを目撃した人もいるかも。
新番組の開発  組立は慎重に行います。せっかく加工した材料が壊れたらもったいないですからね。これは落下装置の土台を組み立てているところです。
新番組の開発  完成した装置たちです。今回はいっぱつくりました。でもまだまだ未完成。実験調整待ちの状態なのです。
 ここからが本番なのです。
             
つらい日々
 実験器具をつくったはいいけれど、ホントにうまく動くの?一番肝心なことですね。でも、まずうまく動きません。うまく動くまで、調整するのです。予備実験は幾度となく繰り返され、不具合を直し、足りないものを作り足し、どうしてもだめなときは一部作り直します。せっかく時間とお金と手間をかけて組み立てたものなので、何とかしたいものです。うまくいかない間は本当につらい日々をおくらねばなりません。番組開始の日も迫っています。あまりにも悲しすぎて写真も撮られていません。
 しかし、そうやってすこしずつ調整した器具で実験が成功した瞬間は、言葉にならない格別のよろこびがあります。

あとひといき
あとひといき 実験が成功すれば、段取りです。狭いステージ、短い時間でスムーズに実験を進行できるようにしなくてはなりません。実験に失敗しても(するものなのですよ!)、その場でもう一度すぐにやり直せるように、器具や小物の配置を工夫したり、準備物を充実させたりします。このころには、少し心に余裕がでてきたりします。展示案内員や実演してくれる学芸員に資料を作って渡したり、研修したりします。
 この番組で渡された資料です。実験の内容と原理、実演例などが記されています。

もうすぐ開演
もうすぐ開演 サイエンスショーは1つの番組が終われば、次の日には次の番組をスタートさせるため、番組最終日の夜に撤収と搬入を行います。搬入が終われば、ステージ上でリハーサル、器具の配置などいろいろチャックするのです。
 ドキドキの本番。始めは緊張もあって、うまくペースがつかめません。お客さんの反応はどうでしょう?


 実験がうまくいったときは、皆さん以上に喜んでいる学芸員。今日も明日もうまくいくように、最善を尽くしております。これからのサイエンスショーにも期待してください。
 最後に、予備実験や失敗も含め、実に500回以上は落ちてくれたであろう、おさるのぬいぐるみに、ごくろうさま。

(科学技術研究科 学芸員 久松洋二)



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