研究ノート

 愛媛県内漁業の漁具資料の 収集と漁法調査
学芸課産業研究科 学芸員 安永 由浩

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漁業が盛んな愛媛県
 愛媛県の海岸線の長さは全国でも5位でおよそ1,533kmもあります。大小様々な島や狭い海峡などがある瀬戸内海と、リアス式海岸と呼ばれる複雑な海岸線を持つ宇和海の2つの海域に接しています。そのため、昔から漁業をはじめとする水産業が盛んです。愛媛農林水産統計年報によると愛媛県の漁業経営体数は5,690もあり、従事している人数は7,510人にものぼります。当館では愛媛県の基幹産業の一つとして、漁業についても資料の収集や調査をしています。

収蔵している漁具
 では、漁業に関する収蔵資料を何点かご紹介しましょう。
 写真1は、「すくい網漁業」で使われる漁具です。明かりでシラス(カタクチイワシの稚魚)をおびき寄せてタモ網ですくい上げます。愛媛県の宇和島市周辺で操業されています。
 写真2は、「戦車こぎ網漁業」で使われる漁具です。「まんが」とも呼ばれます。漁具を海の底に沈めて引っ張ることで、海底の泥の中に潜む魚をとります。愛媛県では燧灘において、愛媛県漁業調整規則で定められた海域と時期でのみ操業されています。


▲写真1
すくい網漁業:タモ網、集魚灯(水上用、水中用)

▲写真2
戦車こぎ網漁業:桁(けた)

調査の方法
 当館ではこれらの漁具を集めるだけでなく、どのように魚をとっているか、つまり漁法についても調査しています。
 文献を調べ、漁師さんからの聞き取りもしますが、最もわかり易いのは実際に漁をする場所に出向くことなのです。漁師さんの船に同乗させていただき、漁の様子をビデオカメラや写真に収め、メモをとります。特にビデオは、漁師さんの動きや漁具の使い方など漁の様子が詳細にわかるため調査には欠かせないものです。
 これには、夜通しで漁の調査をしたり、波が高くて船酔いしたりなど苦労がつきものです。
 こうして集められた資料は、漁業に関する展示に使用される他に、現在の漁業の貴重な記録として残していきます。
 珍しい漁法や近い将来操業されなくなる可能性のある漁法等について、何か情報がありましたら博物館までご連絡ください。


▲調査の様子 右側でカメラを構えているのが筆者

参考
愛媛農林水産統計年報 平成14〜15年 2002〜2003 (愛媛農林統計協会発行)より

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