スペシャル科学工作教室資料
2004年8月16日 愛媛県総合科学博物館 友の会 科学クラブ
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より速く! ポンポン船の原理と作成
 

ポンポン船は、熱エネルギーを運動エネルギーに変える「熱機関」の原理によって動いています。この原理は蒸気機関や火力・原子力発電所など私たちの身近なところでも活用されています。一見単純に見えるおもちゃですが、奥深い科学の原理が働いています。いろいろ工夫して、アイデアがたくさん詰まったポンポン船で楽しく遊びましょう。

【本日の実験】
[1]ポンポン船の原理説明
[2]銅パイプの曲げ方
[3]高速モーターボートまたは超安定型双胴船の作成
[4]高性能化のための改良方法
[5]テスト(ビニル・プールに浮かべて走航テスト)
[6]競技大会(タイムトライアル)
    4mの特設コースでポンポン船の速さを競います。参加は自由です。優勝者を表彰します。

【1.ポンポン船の原理】
ポンポン船は熱エネルギーを運動エネルギーに変える「熱機関」の原理によって動いています。エンジンは銅パイプで作ったコイルです。
 ・熱をエンジンに導く熱源:ロウソクと銅パイプのコイル部分
 ・冷却部:銅パイプ全体が水と空気で冷やされます(水冷+空冷)



[1]銅パイプ内の水が熱せられ,水蒸気とともに水中に噴出します。
[2]水の慣性により銅パイプ内の水が水中へ出過ぎます。このため銅パイプ内が減圧となって水の吸入が起きます。
[3]同時に水蒸気が冷やされて水滴となり、銅パイプ内が減圧となって水の吸入が起きます。
[4]吸入された水はパイプ内で熱せられ,水蒸気とともに水中に噴出します。
[5]この過程「水の噴出」←→「吸入」が繰り返されます(自励振動といいます)。
[6]「水の噴出」・「吸入」の自励振動がポンポン船の推進力の秘密なのです!
[7]水は細い銅パイプから一気に噴出するため、勢いよく飛び出しポンポン船の前進力となります。
[8]ところが水を吸入するときには、銅パイプ周りの水を吸い込むため船が後進する力になりません。
[9]火力が強いと銅パイプで突沸が起こり、ときどき猛烈な噴出を観察することもあります。

【もうすこしわかりやすく】
・口をとがらせて手のひらに息を吹きかけてください。風が手のひらに当たりますね。(前に進む力:強い)
・同じ位置で息を吸ってください。手のひらは吸い込まれません。(後ろに進む力:弱い)


【2.自励振動を見てみよう!】
丸いコイル状のガラス管をアルコールランプで加熱して、水蒸気の発生〜水の噴出・吸引を見てみましょう。
・ガスクロマトグラフ用カラム
・アルコールランプ
・色水


【3.本当に吸ったり吐いたりで進むの・・・?】
ポンポン船は銅パイプをろうそくで加熱し、水の噴出・吸引の繰り返し「自励振動」で進みましたが、本当に噴出・吸引の繰り返しで船が進むのでしょうか?
スポイトで水を吸ったり吐いたりして船が進むか実験してみましょう。




【4.ポンポン船をつくろう】
作り方のページを参考にオリジナルなポンポン船を作りましょう。


【5.高性能化のための改良方法】
[1]パイプの種類
銅パイプは熱伝導性が高く安定した推進力が得られます。アルミパイプは加工しやすいのですが突沸しやすく火力が強いと船の動きが安定しません。

[2]パイプの内径の大きさ
2mmと5mmでは、5mmが水の吐出量が多く推進力が勝ります。今回の実験では内径2mmの銅パイプを使います。

[3]火力
弱すぎると水が水蒸気になりにくく、強すぎると突沸します。固形燃料は強力な推進力が得られますが、今回の実験では危ないので使いません。ろうそくの芯の数を増やすなど工夫してください。

[4]風除
外で実験する場合、風の影響を受けやすく、ろうそくの炎が揺らぎます。アルミホイルなどで風除けを作りましょう。空気の取入れが悪いとろうそくが燃えにくくなりますので、風穴をつくりましょう。

[5]パイプの巻き数
巻き数が多いほど熱交換効率が高くなり、強い推進力が得られます。今夏に実験では4回から5回巻きが最適です。

[6]その他
・パイプを水平に巻いたり、ずらせたりして、巻き方を工夫しましょう。
・パイプにアルミホイルを巻きつけたら、どうなるでしょうか。
・船の底をサンドペーパーで磨きましょう。抵抗が少なくなります。


【6.競技大会(タイム・トライアル)】
全長4mの特設プールでタイムトライアルを行います。参加は自由です。(事前にエントリーが必要です)アイデアがたくさん詰まったポンポン船で楽しく遊びましょう。
<場所>
エントランス・ホール外の特設プール
<参加方法>
自由参加です。事前にエントリーしてください。
<ポンポン船の調整>
エントランス・ホール外のテントで調整してください。
ろうそくの炎でやけどしないように各自で注意してください。
<協議ルール>
手作りポンポン船(パイプ長さは50cm以内)、加熱はろうそくを使用してください。
2回走航させて、早いタイムを記録します。
上位3者による決勝戦を行います。


参考文献
・『ポンポン船の研究』…より速く、より大きく…:平田 允さんホームページ
http://www.asahi-net.or.jp/~uu9m-hrt/pon2/pon2.htm

スポインド船:小林 義行さんホームページ
http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/experiment/pipetship/ship.html