このキチョウによく似た種類にツマグロキチョウがいます。大変よく似ているのですが、大きさが少し小振り・はねの角が角張っている・はねの周囲の黒い帯模様の幅が広い・はねの裏に波状の模様があることで区別をすることができます。キチョウによく似ているので、同じようにどこにでもいるように思われ、実際普通に見ることの出来る蝶だったのですが、実は最近になって急に数を減らしています。
最大の理由として幼虫の餌が挙げられます。キチョウはネムノキをはじめいろいろなマメ科植物を食べるので、私たちの身の回りに普通に生息しています。しかしツマグロキチョウは同じマメ科植物の中でもカワラケツメイ
(写真1参照)という植物しか食べません。キチョウはネムノキがなくても他の植物を食べて生きていけるのですが、ツマグロキチョウはカワラケツメイがないと生きていくことが出来ないのです。
ところが唯一の餌であるカワラケツメイが昔に比べて急に少なくなっています。カワラケツメイの生える場所はその名の通り河原の石ころが転がっているような場所に限られます。昔はそのような場所がたくさんあったのでカワラケツメイもたくさん生えており、ツマグロキチョウも普通に見ることが出来ました。しかし近年の河川改修などによってそのような場所は非常に少なくなってしまいました。カワラケツメイしか食べることのできないツマグロキチョウは、カワラケツメイの減少とともに気が付くとその姿を消してしまっていたのです。
愛媛県では中予や東予から最近採集された記録がありません。隣の香川県ではここ10年以上記録が無く、絶滅の可能性が心配されています。博物館のある新居浜市でも1991年8月に国領川の河川敷で採集されて以来確実な記録がありません。そこで筆者は2000年の9月から11月にかけて新居浜市の渦井川と国領川、土居町の関川の河川敷で調査を行ったのですが、残念ながら見つけることは出来ませんでした。しかし、この3つの川の中にはまだカワラケツメイの生えていそうな広い河原が残っている場所がいくつかあります。今後もこの可憐な蝶の姿を再び見ることが出来ると信じて、生息調査を行っていきたいと考えています。