博物館の科学技術資料収蔵庫には、ナゾの機械がたくさん保存されています。何に使う装置なのか一目では分からない、そんな風によく言われてしまう機械や装置資料。10月4日から始まる企画展「おかしな機械」は、そんな資料の魅力を紹介する展示です。どんな物が展示されるのか、ちょっとだけお見せします。それが何か、あなたは分かりますか?
さて、この黒くて丸い装置(写真1)は、何に使うのでしょう?現代の製品では、これほど真ん丸のものは少ないですね。黒い本体は近未来風なのか前衛的なのか、でもスタンドは古めかしい。とにかく、へんてこりんな形です。皆さんには、何に見えます?
球の中に水を入れ、球を外から火で暖めると、ひげから蒸気が噴出し、球がすごい勢いで回り出す装置なのです。その名もヘロンの蒸気機関。西暦60年頃にアレクサンドリアのエジプト人工学者ヘロンが考案したもので、産業革命時の実用的な蒸気機関と違い、単なるおもちゃだったようです。資料自身は、1940年代に作られた教育用の実験装置です。もし、自宅の倉庫の奥でこんな物を発見しても、この形から使い方を想像するのは、ちょっと難しすぎますね。
次はもっと現代に近い装置。
これは(写真2)、何でしょう?かなり複雑そうな機械ですね。可動部分がむき出しなところが、無骨でいい感じ。作られた時代を表しています。もちろん、今の装置とは似ても似つきません。いえ、単体の装置としては、現代には存在しません。
この装置は、和文タイプライターです。タイプライターとは機械的に文字を紙に印字する装置のことです。その歴史は古く、大正時代からありました。その中で、この資料は1970年代のもの。この資料の時代の後、和文タイプライターは日本語ワードプロセッサにとって変わられ、急速に廃れていきます。
和文は英文と違い、ひらがな、カタカナ、漢字と多くの文字が使われます。全ての文字を配置するのは不可能なので、一文字一文字、使う文字をあらかじめ装置にセットします。その他の文字は必要に応じてセットしました。ストックされている漢字の方が多いので、装置のセットは大型で重く、大変高価、事務員さんのあこがれの装置だったそうです。
他にも紹介したい資料はたくさんありますが、続きは企画展「おかしな機械」でご覧ください。古い装置から感じる「おかしみ」は面白みに変わり、作り手への感心や敬意が生まれることでしょう。ナゾの機械は、実は、とても魅力的は装置なんだということが分かるはずです。