博物館だより

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2008年冬号
話題提供
皆既日食
学芸課 自然研究科 教育専門員  伊藤文雄

 2009年7月22日(水)、日本で46年ぶりに皆既日食が見られます。しかも、今回の皆既日食は、21世紀最大規模で皆既継続時間が最大時で6分39秒にもなります。日本国内だけでなく、世界中の天文ファンから注目されています。

皆既中のコロナ
皆既中のコロナ
写真:井出了一(さいたま市青少年宇宙科学館)
2008年8月1日 中国ウイグル自治区伊吾県にて

 日食とは、太陽・月・地球が一直線に並んだときに起こる現象で、太陽の全体が月に隠される場合を皆既日食、太陽の一部分が月に隠される場合を部分日食といいます。

日食の原理
日食の原理

 日本国内で皆既日食が見られる地域は、南西諸島のうち種子島の南部から奄美大島の北部にかけての範囲で、主にトカラ列島付近がその場所となります。このような世紀の大イベントなので、誰もがぜひ現地に行って自分の目で確かめてみたいと思うのではないでしょうか。

 しかし、現地に行って皆既日食を見るためには気候条件、交通機関、宿泊施設など数々の問題があります。多数の応募者の中から見事に当選したとしても、かなり高い旅行代金を支払うことになるでしょう。

 様々な困難を乗り越えてわざわざ現地まで行かなくても、愛媛県内でも部分日食が十分楽しめます。たとえば、新居浜市の日食の始まりは9時42分頃、食の最大は11時01分頃(食分0.86)、日食の終わりは12時23分頃になります。部分日食の継続時間は約2時間40分にもおよび、食の最大時には太陽の直径の86%が欠けることになります。三日月のような形の太陽を楽しむことができます。

日本での見え方
日本での見え方
資料:天文雑誌「星ナビ」2008年7月号より

 三日月くらいの大きさでも太陽はやはり太陽、月ではありません。直接肉眼で見ようとすると眩しいし、大切な瞳にとってはとても危険です。眩しさを防ぐために、サングラスをかけて見たり、色付きの下敷きで見たり、フィルムの感光部分(黒色)で見たりする行為をよく見かけますが、確かに可視光線は弱くなるので太陽はよく見えますが、赤外線はそのまま通過してしまうので、本人が気付かないうちに網膜が焼けてしまいます。ひどい場合には太陽の残像が消えなくなってしまうこともあります。危険ですので、絶対に使用しないでください。

 そこで、日食を観察するときに安全に使用できるものをいくつか紹介します。「太陽観察用しゃ光板」が2000円程度でナリカ、ケニスなどの教材会社から販売されています。もっと安くという方には「溶接面用色ガラス」が1枚300円程度の価格でホームセンターなどで販売されています。色ガラスのしゃ光度は♯13のものが最も適していますが、なければ♯12でも概ね可です。天体望遠鏡や双眼鏡で見たいという方には、「アストロソーラー太陽フィルター」が3000円程度の価格で天体望遠鏡専門店で販売されています。取扱説明書を必ずお読みください。

 その他にも様々な製品がありますが、いずれにしても、安全が第一です。早めに準備を整えて、みんなで楽しく今世紀最大のイベントを体感してみましょう。

皆既日食帯
皆既日食帯
資料:天文雑誌「星ナビ」2008年7月号より

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