博物館だより

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博物館だより

2008年冬号
話題提供
身近なもので電池をつくろう
科学技術研究科 主任学芸員  藤本光章

 みなさんの身の回りでは、いろいろな種類の電池が活躍しています。時計やデジタルカメラ、携帯電話、パソコンなど、様々な分野で使われています。電池の発明のきっかけになったのは、1780年頃にガルバーニが行ったカエルの実験でした。カエルと電池は、全く関係がないように思えますが、ある発見により大発明へとつながったのです。

 イタリアの解剖学者ガルバーニは、カエルの脚を金属板上にのせ、脚部神経に針金を通し、その針金が金属板に触れるたびに、カエルの脚が痙攣することを発見しました。この実験により、ガルバーニはカエルの脚から電気が発生していると考えました。しかし、実際には2種類の金属によって電気が発生していることに気づきませんでした。

 このガルバーニの実験をヒントに、1800年、イタリアの物理学者ボルタが初めて電池を作りました。ボルタは電気を作るのに2種類の金属と電解液があればよいということを見抜き、銅と亜鉛の板に希硫酸(電解液)で湿らせた厚紙をはさみ、直列に接続した「ボルタ電堆(電池)」を作りました。電圧の単位「ボルト」は、ボルタの名前からきています。

 しかし、ボルタの電池には欠点がありました。それは銅板の正極から水素が発生し、硫酸の濃度が低下し、やがて電流が流れなくなってしまうことでした。1836年、イギリスのダニエルはこの欠点をなくすため、亜鉛と銅を別々の電解液につ浸けることを考え、「ダニエル電池」を作りました。

 現在の乾電池の原型になったのは1868年にフランスのルクランシェが作った「ルクランシェ電池」です。ルクランシェは、負極(−)に亜鉛、正極(+)に二酸化マンガン、電解液に塩化アンモニウムを使うことで、現在のマンガン乾電池の原形を考えました。

 身近にあるものを電極と電解液として、電池を作ることができます。今回は、3通りの方法をご紹介します。

くだもの電池

 柑橘系のくだものが性能が良いとされていますが、いろいろ試してみるのも面白いと思います。写真のようにレモンの輪切りに銅板、亜鉛板を差し込み、リード線で電子オルゴールにつなぐと音が聞こえてきます。しかし、モーターを動かすほどの電気は作れません。

※実験した後のくだものには金属が溶け出しています。絶対に食べないでください。

くだもの電池

備長炭電池 その1

 備長炭に食塩水を湿らせたクッキングペーパーを巻きつけ、その外側にアルミホイルを巻きつけます。写真のようにリード線でモーターにつなぎます。

備長炭電池 その1

備長炭電池 その2

 金属バケツに食塩水を入れ、その中に備長炭を浸け込みます。写真のようにリード線でモーターにつなぎます。

備長炭電池 その2

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